Hanabi Film Festivalは、アメリカ、ポートランドの老舗映画館Clinton Street Theaterで、お盆期間に当たる8月中旬に毎年開催されている日本映画のフィルムフェスティバルです。60年代の名作からインディー・カルト系の作品を中心に、北米初上映となる最新作をも含んだ、日本映画界が誇る幅広いジャンルの作品を上映しています。
今回は映画館のオーナー、Aaronからコラボレーションの相談を受け、8月17日から29日の間に開催される2026年度イベントのポスター、Tシャツを制作する機会をいただきました。
ポスターに与えられたテーマはなく完全に自由だったため、まずはフィルムフェスティバルから連想されるもの、もしくは関連するモチーフを書き出し、スケッチを通じてコンセプトを導き出す作業から始めました。
上映作品で取り扱われているテーマや関連モチーフをリサーチし、花火といえば夏祭り、金魚すくい、田舎への郷愁…など、数珠繋ぎ的に関連キーワードを掘り下げていきました。また、アメリカの中でも特にサブカルチャー色の濃いポートランドと日本文化の融合も検討し、上映作品に登場するキャラクターのコスプレをした柴犬によるポスターのパロディなど、ユーモラスなコンセプトも提案しました。
ドラフトの検討を重ね、Aaronのフィードバックを取り入れた結果、シュルレアリズムをテーマとすることにしました。
上映作品の題名や主要テーマには、雨、うなぎ、蛇、卵など、水に関連したものが多く、これらは日本の夏の定番であるホラー映画を想起させます。これを原点として、ややダークで幻想的な世界観を打ち出したポスターイラストレーションを制作する方向で進めました。
最終コンセプトは「卵」を中心に、スクリーンのような役割を果たし、また想像力を宿す器として展開しています。
小さなひび割れから生まれたウナギと数匹の金魚が卵を取り囲み、重力から解放されたような、浮遊感のある空間を漂っています。卵の表面には海面に佇む鳥居と、傍らに浮かぶ小さな折り鶴の情景が映し出され、その背後には日の出で彩られた山々が広がり、上映作品の世界観を暗示しています。また、表面に広がる水面は、次元という概念のないシュルレアリスムの世界にまた一つ奥行きを与えています。
アクセントとコントラストカラーには、日本文化で多用されている朱色を用い、陰・陽の美意識を想起させる色彩構成にしています。
タイポグラフィはやや控えめな明朝体を採用し、動的要素のあるイラストレーションと調和するようにしました。日本の美意識が持つ静寂さと、思索的な側面を表現しています。
Tシャツの前面にはポスターのイラストレーションを配置し、背面にはミニマルに再構成したタイポグラフィを、肩甲骨の間に収まるように控えめに配置しました。